ご挨拶

創薬分子プロファイリング研究
センターの設立にあたって

創薬分子プロファイリング研究センター
センター長 夏目 徹

産学官が一体となっての新薬開発へ取り組んでいかなければならない、という強い社会的要請から、創薬分子プロファイリング研究センターを設立しました。

新薬開発は、様々な局面があり、莫大なコストと長い時間のかかるプロセスです。その中で、本センターは、新薬候補化合物(リード化合物)のプロファイリングに特化し、このミッションに関わる高いレベルと実績を有する創薬基盤技術を、臨海地区に一極集中化しました。

分子プロファイリングとは、生命システムを司るタンパク質ネットワークを、リード化合物がどのように制御しているのかを知り、さらに化合物とその相互作用タンパク質の化学結合様式までも理解することを意味しています。すなわち、化合物と生体との関係を分子レベルで知り尽くすということです。

各製薬会社が苦難のすえ開発したリード化合物の9割は、薬効不足と副作用から開発中止となり、膨大な時間とコストを喪失しています。しかし、それぞれの化合物をプロファイリングし、知り尽くすことができていれば、臨床研究の成功率を飛躍的に向上させることができるはずです。また、開発中止となった化合物を復活させることも可能です。そのために、薬効を高めたり、あるいは副作用を軽減させるための理論的な分子設計をすることもプロファイリングによって可能となります。あるいは、既知上市薬の新たな疾患領域を見つけることもできます。

このような目標を掲げ、本センターでは、分子プロファイリングを体系的かつスループット高く遂行する基盤技術を研究開発するだけではなく、解析プラットフォームを、広く産業界に提供することも目指します。そのために、実験計測研究者と理論計算研究者が常に相補的に融合するようなチーム構成になっています。

即ち、定量プロテオミクスと数理システム解析が一つのグループとして機能し、計算機による分子設計と、それを構造生物学的手法で検証する分子間相互作用解析が、やはり、一つのグループとして機能します。そして、この二つのグループをデータ管理統合チームが融合し知的データ基盤を生み出し、センター全体が一つの組織としてダイナミックに機能し、産業界に少しでも多くの貢献をしていきたいと考えています。

また、 本研究センターに構築された世界屈指の創薬基盤技術をさらに発展高度化することで、積極的に産業界と連携し創薬産業を短期的に活性化させるとともに、生命科学における新パラダイム創出を目指します。特に、あらたな市場を生み出せるポテンシャルのある、完成された技術基盤やノウハウをくくりだし、産業界とともにジョイント事業を創出することを目的とした、実験的な事業化センターとしての機能も果たします。即ち、橋渡しをする相手が存在しない、新規な事業を自ら「橋を渡り」、新たな産業と市場と生み出すことを目指しています。

創薬基盤技術の発展高度化のために、タンパク質アレイの利用により薬理薬効メカニズムを解明する「機能プロテオミクスチーム」、オミックスデータの創薬への有効活用のための数理情報解析システムを開発する「システム数理統合チーム」、計算化学とNMR技術との組み合わせにより薬物の作用機序を解明する「3D分子設計チーム」、新規標的に対する化合物選択を評価する「分子シミュレーションチーム」の4チームを編成しています。さらに、事業化センターとして新たな産業と市場と生み出す「汎用ヒト型ロボット」「抗体プロファイリングによる創薬・診断」「数理情報解析によるデジタル創薬・診断」「分子モデリング・コンサルティング」「分子設計支援システム」に関する5つの事業化を目指しています。